2012年 第2号 Vol.165
 
 編集・構成 奥貫 晃

 
 発行人:今井 康了
 発行:日本特撮ファンクラブG
 

 「緯度G大作戦2012」 無事終了より)

 去る3月11日(日)に開催されました『緯度G大作戦2012』、おかげ様で盛況の内に無事終了致しました。遠方から来て下さったゲスト出演の原坂一郎さん、金子郁子さん、佐川和夫さん、そしてお客様として足を運んで下さった皆様、誠にありがとうございました。 ウルトラ警備隊のコスプレで颯爽と登場した原坂一郎さんの『元祖ちびっ子怪獣博士のお笑いトークショー』、今回は2時近い枠になりました。原坂さんが子ども時代ノートに描かれた『ウルトラセブン』漫画から、お客さんと我々スタッフが壇上に上がってのクイズコーナー、金子光伸さんのファンサイトを運営されている金子郁子さんを交え、昭和の名子役を語るコーナーなど、バラエティーに富み飽きさせない内容でした。ノートに描かれた『セブン』の漫画は、第1話放映前に雑誌に発表されていた写真や記事を元に描いたものなのですが、登場怪獣がエレキングだったり、地球人であるダンにウルトラセブンが乗り移っているなど、完成作品と異なる箇所はあるものの、一本の漫画としてまとまっているのに驚かされました。また、クイズコーナーはこちらの思いも寄らないハイレベルな出題(笑)で参りました。関東人にはちょっとない発想には、これからのG祭を考える上でも勉強させられます。
 『佐川和夫監督 円谷特撮を語る』、こういったトークショーの機会はこれまで少なかった佐川和夫監督ですが、大変充実した、中身の濃いお話を伺えました。監督として関わられた作品のお話も勿論ですが、映画界に入られた当時の円谷英二監督に纏わるお話や東宝撮影所でのアルバイト時代のお話が大変印象に残りました。是非またお話を伺いたいです (写真は、イベントでお話しされる佐川和夫特技監督)。
 降臨!ウルトラマンサーガ


 昨年夏にタイトルが発表されて以来、「ゼロ、ダイナ、コスモスが主役」、「AKB48のメンバーが防衛チーム役で出演」、「本格的ミニチュア特撮が復活」など様々な前情報が出たものの、物語の全貌については直前まで掴みにくく期待と不安のあった今作でした。しかし歴代のウルトラ映画でも、かなりの力作に仕上がっていたと思います。

 別の地球で、人類の殆どがバッド星人によって連れ去られ、残されたチームUと数人の子ども達が怪獣の襲撃を受けながら何とか生き延びているという世界観は、テレビシリーズの基本パターンからすれば異色と言える設定の多かったこれまでのウルトラ映画の中でも特に際立っていました。しかし、某アニメ作品元ネタのスーパー買い出しから、アーストロン出現、ダイナ登場と展開する冒頭は重厚なミニチュアワークも相まって本作の世界観を簡潔に表していたと思います(アーストロンの出番がこれだけとは勿体ない!)。

 本作の見所の一つになったのが主人公・タイガとゼロのやり取りで、変身前の人間とウルトラマンのやり取りが頻繁に描かれたのは過去の例では『ザ☆ウルトラマン』のヒカリとジョーニアスがあったものの今回はそれ以上に前面に押し出されていました。実写では異例ですが、前2作や『列伝』でゼロのキャラクターが浸透していたので違和感なく入ってゆけました。前半ではタイガが変身を徹底的に拒否する事でギャグにしながら、やがて語られるその理由。ヒーローや憧れの存在に対する複雑な心境は近年の長谷川脚本ではよく描かれる題材ですが、今回はかなりハードかつストレートなもので、やがてチームUの秘密を知り、ウルトラマンとして赴く展開は、異色ですがウルトラマンだからできる物語となっていたのではないでしょうか。
 『8兄弟』以来ここ4作中3作目の登場で、これまでは脇に回っていましたが、遂に後日談が作られる事となったアスカは、何よりクレジットではトメになりすっかり貫禄がつきました。テレビシリーズ最終回から約14年という年数は、やはりテレビシリーズで父親のカズマが光に消えてからの年数に近く、本放映を夢中に観ていた身としては何とも感慨深いものがありました。ラストはつるの氏本人の要望を取り入れたとの事ですが、また後日談が作られる可能性が出来ただけでなくアスカのキャラクターに相応しいものだったと思います。
 一方ムサシはタイガや子ども達を見守る先輩ヒーローとして安心感を与えていましたが、メインの登場人物に年長の人物がいない中で、強いて言えばその役割を担っていたように思います。これまで『コスモス』の大アンチだったあるGスタッフは本作でかなり見直したそうです^_^;。
この3人のウルトラマンが正体を最初から隠そうとしないのには驚きましたが、本作では物語が進むにつれ明かされてゆく事柄がいくつかあり、そうした流れを考えると正体をオープンにしたのは正解だったと思います。一方で未見の方にはストーリーを説明しにくいのも確かなんですが。
 AKB48の出演が発表当初は物議を醸した「チームU」、リーダー格のアンナは本作のもう一人の主役と言ってよい活躍ぶりでした。90分の映画の中で他のメンバー一人ひとりが充分描ききれていないところはあったものの、小学館「ウルトラマンサーガ超全集」にはおか監督による彼女達の詳細な背景や本編では描かれなかった映画冒頭までの出来事が日記形式で掘り下げられていました。AKBの出演は早い段階で決まっていたそうで、役柄に関しては他にも選択肢があったのが、メインに据える事で単なる客寄せにさせなかったのは正解だったと言えるでしょう。AKBには思い入れはありませんが、彼女達の熱演には拍手を送りたいです。
 久々にミニチュアがメインとなった特撮 、冒頭のダイナ登場 は、前2作とははっきり違う「地球の大地を舞台に戦う巨大ヒーロー」としてのウルトラマンを明確に打ち出した映像でした。特に敵怪獣のメインであるハイパーゼットンはこれまで定番だった、「着ぐるみ→CGで巨大になる」流れを逆転させたのがマンネリを打破しようという姿勢を感じました(強敵ぶりが描けたのはゼットンのキャラクターあっての事だと思いますが)。CGに関しても三池特技監督は、ゼットンギガントのCGは着ぐるみならばどの材料を使い、発光部分はどの位置に光源を置いているかまでイメージされて作ったとの事です。また、VFXプロデューサーの鹿角剛司氏のコメントで興味深かったのは、「映像作品は様式で成り立っているが、観客が受け入れられる様式は2通りまで(アニメならセル画と画用紙に描かれた背景、特撮なら本編の実写と特撮のミニチュア)、そこにCGが入ってくると受け入れにくい。」との事で、そうした違和感をなくすよう苦心されたそうです。今後これだけの規模の特撮作品がどのぐらい作られるか何とも言えませんが、本作がミニチュアワーク
とCGの兼ね合いの手本になってほしいものです。三池敏夫監督には『ゴジラ』次回作があるなら特技監督をお願いしたいです。
 サーガへの変身はもう一ひねりあってもよかったとは思いますが、最終決戦で見せたチームUの思わぬ反撃で描かれた、人間とウルトラマンが共に怪獣に立ち向かう姿は本作の真骨頂と言っていいカタルシスがありました(ゼットンは半分宙に浮いているイメージなので、あの手が通じるかは疑問はあるのですが、冒頭で同じ作戦が描かれているので説得力がありました)。企画時に東日本大震災があり、様々な制約や配慮があっただろうと思われる中で、作り手の要所での選択と、シリーズのマンネリ気味だったところは変え、良いところは残す姿勢が内容面で好結果に繋がったと思います。私の周囲、特にGスタッフでは封切りで未見の人が多いという嘆かわしい状況なのが残念ですが、9月にソフト発売との事で是非観てほしい作品です。

 ・2度目の共演となったゼロとダイナ。しかし特に面識があった描写はなく、しかも前回の共演作『ウルトラ銀河伝説』の『大怪獣バトル』世界はかなり未来のはずで、時間軸としてどうなのか、イベントにておか監督に伺ってみたところ、「ゼロの物語としては作品の順番通り、正式な設定ではないが『大怪獣バトル』と本作の地球では年代のズレがある」とのお答えでした。
コスモスの事を知っていたのは、『列伝』を通してかと思うのですが、そもそも私なりの解釈ではあの番組は「ウルトラの星から地球に送信されているドキュメンタリー番組」だと考えているのですがどうでしょう。

 ・タイガはムサシを君づけで呼んでいましたが、俳優の実年齢では意外に杉浦氏よりDAIGO氏の方が上で32歳との事で(25、6だと思ってました)意外でした。30代でヒーロー役というと『ズバット』の宮内洋氏や『10‐4』の水木譲氏などは若く見えましたが、ウルトラシリーズでは『タロウ』のテンペラー星人の回に出演していた頃の黒部氏、森次氏や竜崎勝氏と同じぐらいの年齢と考えると、日本人の歳の取り方は随分変わったと実感させられます。

 非公認戦隊アキバレンジャー

 先日無事終了?しました『アキバレンジャー』。こういうパロディ戦隊は漫画ではありましたが、まさか本家本元の東映が作るとは。変身アイテムのネーミングや、劇中出てくるオタク用語にこんな言葉使わねーよ!と半ば呆れつつ、しかし回を重ねる毎に「嘘から出た真」的面白さというか、泣ける話もあって、いつの間にか一週間で一番楽しみな番組になってしまいましたf^_^;。終盤の展開は普通の番組なら反則ですが、この番組なら相応しかったと思います。“公認様”に比べ自由に出来るのか、見慣れてくるとヒーローのデザインは意外に格好良く(シルエットで3人がはっきり区別出来るデザインは珍しいのでは)、イタッシャーロボのCGのクオリティーも目を見張るものがありました(照明の照り返しを入れるとかなり違うものです)。こういったセンスや技術が良い形で“公認様”にフィードバックされればと思います。
ノーマークだったけどフタを開けたら面白いという意味では、かつて『マシンマン』や『スケバン刑事』が出てきた時を彷彿とさせました。第二シーズンをやるかどうかはともかく、深夜特撮番組のエポックメイキングとなった事は間違いないでしょう。

 ・『仮面ライダーフォーゼ』弦太朗の自宅「如月モーターズ」は私の家の近所でびっくり!実際に数年前からバイク屋です。八名信夫氏が祖父役でしたが、歩いて1~2分の場所には『キカイダー01』で共演された池田駿介さんのお店があったのです。


 放映中!二大ウルトラ番組

 2011年7月からはテレビ東京系で『ウルトラマン列伝』が、10月からはTVK他で『ウルトラゾーン』と、新たなアプローチによるウルトラ関係の新番組がスタートしました。『~列伝』は歴代ウルトラマンの活躍を2週ぐらいに渡って編集で紹介してゆく番組かと思っていたら、多くは本編1エピソードをほぼ丸ごと再放送なのが意外でした。更にビデオ、劇場作品を分割して放映するとは太っ腹というか。ただ、第1回ではアイスラッガーの切断カットに爆発を被せ、あたかも光線技のように加工されている事から考えると、昭和作品の放送はなかなか難しいかも知れません。新作部分としてオープニングとエンディングに入るウルトラマンゼロのコメントが見所といえば見所でしょうか。本数が限られている中でのセレクトとはいえ前後編の後編だけの放映だったり、『ティガ』、『ダイナ』を観た事のない人には楽しみきれないと思われる「うたかたの空夢」を流すのはどうかと思いますが、見方を変えればウルトラシリーズのみならず特撮番組は現在地上波在京キー局での再放送すら殆どないだけにビギナーにとって良き入門番組であって欲しいものです。

 一方の『ウルトラゾーン』、これは一体どんな番組かと思っていたのですが、思わぬ収穫でした。怪獣たちが繰り広げるコント、「不良怪獣ゼットン」、「ヘアサロン マグマ&ババルウ」に代表されるシュールなお笑いバライティかと思いきや、30分間、丘みつ子演じる初老の未亡人とザラブ星人の交流をシリアスに描いた一編「THE LOVE」(このタイトルには最初は気付きませんでした)が入ったのには、予告編などの予備知識がなかっただけに驚かされました。スタッフは以前取り上げた『バカリズムマン対怪人ボーズ』等の住田崇監督や、新作『電人ザボーガー』を手掛けた井口昇監督、『MM9』の田口清隆監督、宮内国郎氏の楽曲を再演奏した音楽製作は『ギララの逆襲』の福田裕彦氏と、実績のあるメンバーを揃えており、タイトル部分の映像と音楽の再現ぶりや、例えば「怪獣マッサージ」のコーナーでは整体士にマッサージを受ける怪獣の向うで黙々と働く他の従業員をさりげなく映したり、「不良怪獣ゼットン」で登場する’80年代風ツッパリ高校生に合わせて女の子は髪型が聖子ちゃんカットだったり、ババルウ星人の声に津田寛治氏ら、意外に豪華なキャスティング(ライダー系が多い)などさり気なく凝った作りで、これが笑いを誘うのです。何よりやっているのはコントでも、会話の内容が怪獣たちの本編での設定を押さえているのが嬉しいです(そういえばグドンとツインテールを出しながらツインテール=女の子の髪型ネタが出てこないとは、円谷プロとしてはこのネタは御法度?)。怪獣ファンとしても楽しめますが、それまで怪獣に興味がなかった人でも、この番組を観ているとゼットンなどは怪獣人形が欲しくなるのではないかと思います。この番組のおかげでもし怪獣人形が売れれば成功といえるのではないでしょうか(意外にバンダイはスポンサーではないんですが)。製作幹事局がTVKのため、放送している局が限られているのが何とも残念です。

 ウルトラ作品の新作は映画やビデオ、『大怪獣バトル』といったミニシリーズなど、何らかの形では毎年作られているものの、本道である本格テレビシリーズに関しては『メビウス』終了以来5年近くのブランクになっています。しかし、過去にもそうしたブランクの時期を『ウルトラファイト』、『ウルトラマンM730』といった番組で繋いできたのもウルトラシリーズの歴史で、『ウルトラゾーン』はそうした流れに新たな切り口を確立しつつあるように思います。『宇宙船』のインタビューによると田口清隆監督は「番組のアプローチはどんどん変えてゆく」と語っており、今後もどんな内容のものが出てくるか予断を許さないようです。現在ウルトラシリーズはハッキリ言って東映作品に人気では後塵を拝しているだけに、これらの番組を通じて広く認知度を増やしていく事にウルトラファンとしては期待したいです。3月には劇場作品『ウルトラマンサーガ』 が公開。AKB48が演じる「チームU」がいろいろと話題になっていますが、なにより地球が舞台となり、ミニチュア特撮が前面に押し出されるのは『8兄弟』以来3年ぶりになり、大変久しぶりに思えます。特に『ダイナ』最終回後のアスカやスーパーGUTSが描かれるとは。リョウが隊長というのは妥当な人選ですな^^;。バット星人が宇宙一のゼットンブリーダー(!)という設定は『帰ってきた~』最終回を観る限りかなり疑問ですが(笑)。特技監督の三池敏夫氏は特撮研究所の所属で、ウルトラシリーズの特技(特撮)監督で同社関係者は矢島信男監督以来でしょうか。特技監督としては『大魔人カノン』がありますが、特殊美術では『ライダー』、『戦隊』、『ガメラ』、『ゴジラ』、『ウルトラ』各シリーズで腕を奮ってこられた方なので、円谷ミニチュア特撮の醍醐味を見せて欲しいものです。一部で物議を醸しているAKBの出演ですが、これまた久しぶりに防衛チームがドラマのメインとなる中で、シリーズのカンフル剤となってくれればと思います。

  『マイティレディだけを撮ってきた!!~インディーズ映画監督のトクサツ人生~』永田トモオ著 白泉社

 新作『マイティレディ ザ・シリーズ』がDVDでスタートした特撮キャラクター・マイティレディは、アマチュア特撮映画出身の大桃一郎監督により'84年にパイロットフィルム的内容のビデオ『マイティレディのすべて』が発表された後、長いブランクを経て10年程前より再びインディーズで製作されているシリーズ。本書では大桃監督の幼少時代から自主製作映画に手を染めてゆく学生時代、そして商業作品に進出するものの一旦映像業界を離れ、一般企業のサラリーマンを経て再び映像業界に復帰し、『マイティレディ』の新作を作る現在に至るまでが、彼を取り巻くプロアマ含めた特撮界の状況を交えつつ著者の取材により綴られています。実は『マイティ~』については私は未見で、何しろ大桃監督は'88年の『スターヴァージン』を最後に消息は知らず、近年になってインディーズで『マイティレディ』シリーズが継続していたとは不勉強で知りませんでした(インディーズ作品は殆ど商業誌で扱われないのですが)。しかし、大桃監督の事はアマチュア時代より知っており、作品も何作か観ていたので、監督として健在だったとは驚くと同時に嬉しく思いました。
 幼稚園から小学生にかけ第2次怪獣ブームの洗礼を受け、一時は離れながら中学生の時に「ファンコレ」で特撮・怪獣への興味を再び呼び覚まされるという、'60年代前~中期生まれの特撮ファンお決まりのコース(笑)を歩みながら、自分で作品を作る方に情熱を傾けていたという学生時代。特撮ものの新作が少なかった'80年代前半当時は、アマチュアによる自主製作作品が盛んに作られており、大桃監督はのそんな中で有名な人物の一人でした。本書はこの当時のアマチュア特撮映画の状況について書いているのがリアルタイム世代には懐かしくもあり、当時を知らない世代には新鮮に映るかと思います。
さて、大桃監督高校時代の代表作と言える『いきなりウルトラマン』は、本格的なミニチュアワークもさる事ながら、コメディタッチとどこか垢抜けた作風が非常に斬新だった記憶があります。何より楽しんで作っている感じが好感がもてました。後に「ウルトラマン白書」で自主製作のウルトラ作品の一つに紹介されていたのも頷けます。そしてもう一つ、大桃作品の特徴は、女の子が活躍する華やかさがある事で、当時の他のアマチュア作品にはあまりない要素でした。これが原形である『ウルトラマン・モモ』を経て表題の『マイティレディ』となってゆく訳です。
 こういった着ぐるみに仮面の女性キャラクター、本書の表現を借りるならマスクドヒロインは、特撮キャラクターの世界では戦隊チームの一員や脇役キャラならともかく、主役としては他には皆無です。一方アニメでは『プリキュア』や『セーラームーン』が幅広い人気を得ていますが、その理由の一つは、(これはある人から教えられた事なのですが)これらのキャラクターの場合変身といっても衣装が変わるだけで顔はそのままであり、これがメインターゲットである小さい女の子にとっての、「かわいい女の子を絵に描きたい」欲求に応えているから、というのです。そう考えるとマスクドヒロインは主役としてはあまりニーズがない訳です。そんな中で『マイティレディ』がマイナーながら独自の路線を確立してきたのは大桃監督のこだわりあっての事だと言えるでしょう。実際にマイティレディの基本設定はウルトラマンの要素を受け継いでいますが、試行錯誤を経たというデザインや着ぐるみの作りは写真を見た限りでも人間の女性の可愛らしさ、セクシーさを活かしたもので、万人受けするかどうかはともかく独自の魅力を醸し出す事に成功していると思います。また、ミニチ
ュア撮影はビルの屋上にセットを組み、最小限の人数で撮影を行うという手法だそうです。ビルの屋上を特撮のオープンセットに使うのは私も考えた事がありますが、実際にやっているとは驚きました。
 読んでいて特に興味深いのは大桃監督には必ず理解ある協力者がいる事で、先にも書いたように彼自身の人柄と、彼の作る作品にも魅力があるという事でしょう。どの作品かは失念しましたが、私自身もアマチュア時代に彼のミニチュア作りの作業場に一度お邪魔した事がありました。そこでは、特撮には興味ないが大桃がやるならと手伝っている人もいて、映画を作るにはこういうところが大事なのかと思ったのを覚えています。大桃作品は一部の作品しか観ていませんが、いつか「いきなり」ブレイクするんじゃないかという可能性を秘めているように思うのです。何より同世代でアマチュア出身の作り手が、今も頑張っているのは元気づけられるものがありました。『マイティレディ』と大桃監督ををこれまで知らなかった人にも読んでほしい一冊です。

 おわりに

 この夏は、毎年恒例の『ウルトラマンフェスティバル2012』や、以前から話題となっております東京都現代美術館で開催の『館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』など、地方を含め多くのイベントが開催されます。 特に、7月10日(水)より始まっております、『特撮博物館』は質量ともにかなりのもので、久々の大々的な特撮イベントではないでしょうか。ゆっくり観て回ると結構時間がかかります。東宝特撮ファンならば地下フロアの『特撮美術倉庫』コーナーが特に楽しめます。また、『特撮スタジオ・ミニチュアステージ』ではセットの中にも入って記念写真を撮ることも可能です(撮影ができるのは、『特撮スタジオ・ミニチュアステージ』のみ)。10月8日まで開催してますので、どうぞ。次号でレポートをお送りしたいと思います。
それではまた!