2013年 第1号 Vol.168
 
 編集・構成 奥貫 晃

 
 発行人:今井 康了
 発行:日本特撮ファンクラブG
 

 

 暑い日々、また天候不安定な日々が続いておりますが、如何お過ごしでしょうか。今回は大変悲しいお知らせから始めなくてはなりません。


 さようなら、平山亨さん


 会報編集中、大変悲しい知らせが入りました。元東映プロデューサー・平山亨さんが731日、心不全で亡くなられました。享年84歳。

 昨年末に出版されました『泣き虫プロデューサーの遺言状』にて御子息により闘病生活が綴られており、かなり具合が悪いと聞いておりましたが、とうとうこの日が来てしまったという思いです。個人的には池田駿介さんのお通夜でお見掛けしたのが最後になってしまいました。

 『悪魔くん』を初め、『キャプテンウルトラ』、『仮面の忍者赤影』、『ジャイアントロボ』、『柔道一直線』、そして『仮面ライダー』、『秘密戦隊ゴレンジャー』で現在も続く東映特撮ヒーローの礎を作り上げた功績は言うまでもありませんが、忘れてはならないのは我々ファンとの交流をとても大事にして下さった事でしょう。
 Gでは2009年まで『緯度G大作戦』トークショーのゲストとして何度も来ていただいただき、作品について、俳優さんについて、スタッフについて、いつも真摯に語って下さいました。20周年パーティーでは応援の言葉をいただき、感謝に堪えません(先の『泣き虫~』巻末のイベント出演のリストに『緯度G大作戦』が記載されているのは大変光栄に思います)。また、多くの著書、寄稿はいつも興味深く拝読させていただきました。どちらかと言えばウルトラ派の私ですが、平山さんの言葉にはいつも何か得るものがありました。中でも『宇宙船』に'84年から'85年にかけて連載された『私の愛したキャラクターたち』は特に印象に残っています。御自身の作品の登場人物の中でも、主に悪役を中心に彼らの生涯をリアルなタッチで綴った内容でしたが、文中で「劇中の登場人物は実在の人物であり、我々は彼らを報道する“語り手”である。」という旨の一文には目から鱗が落ちる思いでした。
 思い起こせば感動かつ衝撃的だった『ロボ』の最終回や、主演の藤岡氏が撮影中の怪我で今後の出演が危ぶまれた際に、本郷猛役を別な役者に代える案を断固拒否したという『仮面ライダー』でのエピソード等、荒唐無稽で時にはチャチなところもある東映ヒーロー作品の世界ですが、平山さんのこの「彼らは実在する」という考えに支えられていたからこそ、あれだけの人気を得て現在も語り継がれているのだと実感させられたものです。東映ヒーロー作品が現在も途切れる事なく続いているのも、平山さんの姿勢が後進のスタッフに少なからず受け継がれているからでしょう。今後も受け継がれてゆく事を願って止みません。

 平山亨さん、ありがとうございました。慎んで御冥福をお祈り申し上げます。

「緯度G大作戦2012春・トークショー再録『佐川和夫監督 円谷特撮を語る』」(中編)
 2012311日 みどりコミュニティセンター


 
それでは、しばらく中断してしまいましたが、昨年3月の『緯度G大作戦2012春』で行われた佐川和夫監督トークショーの続きとなります。
「G会報」166号の前編と合わせてご覧下さい。

 ゲスト:佐川和夫 特技監督   聞き手:中村 哲(株式会社キャスト社長)   奥貫 晃(日本特撮ファンクラブG)

 (承前)

――佐川監督はメカ特撮に定評があると言われているのですが、ご自身としてはどうお考えでしょうか?

佐川  メカが何故大事かと言うと、(観客が)映像を観て、メカを操縦しているのが自分だと思わせるような映像を作る事から始まる訳です。 それと我々の場合あくまで営利団体ですので、オモチャ屋さんがバックについている訳です。お客さんがカッコイイと感じ、オモチャ屋さんが満足してもらうには、自分も操縦してみたいと思っている事になんとか近い映像にする。円谷のオヤジさんの見せ方なんですけど、皆さんが佐川の作った映像は素晴らしいと言って下さるのはそういう事じゃないかなと思います。

――ヒーローものでは『帰ってきたウルトラマン』の「残酷!光怪獣プリズ魔」がありました。この回は覚えていらっしゃいますか?

佐川 この頃は円谷プロに来ていた各監督は本編特撮とも全て(予算を)オーバーしていたんですね。この回はホン(脚本)の段階でこれは合成ばっかりじゃないかと。という事はお金がかかる訳です。当時の円谷プロでは合成は35㎜で処理していました。35㎜だとフィルムの価格が16㎜の34倍、更に合成となると10倍ぐらい、何千万になってしまいます。それでハーフミラーショットという手法で作ったのですが、これだと現場で全て合成出来る訳です。1日に撮れるカット数は限られているのですが、徹夜すれば10カットぐらい稼げるなと。それでも普通なら5日のところ7日ぐらいかかりました。上がった結果本編の山際永三さんが、編集の段階で合成が上がっているので、「佐川さんどうやったの?」と聞かれまして、「現場で合成したんです」と答えたら、「こんな事出来るの?じゃあこれから全部これでいこうよ!」と。とんでもない!そんな事したらスタッフ死んじゃうよと、そういう事もありました(笑)。

――佐川監督ならではのヒーロー演出のこだわりはございますか?

佐川  孫が56歳なんですが、今は67歳に対象年齢が下がってますよね。私の考えている映像は、小さい子が観ても、中高生が観ても、おじいちゃんおばあちゃんが観ても何とか納得して貰えるような映像、それがヒーローの出し方かなと。強くてカッコよくてという中でも、真似したくなる部分ですね。ただ、男の孫が出来た時に、これはやっちゃいかんという(言われた)のが、殴る蹴る。2歳か3歳になると孫は真似します。そうすると母親は「絶対観せません!」となってしまう訳です。でもやっぱり撮る方としては殴ったり飛び蹴りしたりゴロゴロ転がったりがないと無理な部分もある訳ですね。家には最初の『ウルトラマン』から『ガイア』まで全部DVDがあるんですが、孫は何を一番観ているかというと最初の『ウルトラマン』から『タロウ』までなんです。平成ウルトラマンは自分としてはレベルが高いと思っているんですが、(孫にとっては)恐がってしまう部分があるんですね。

 今朝も東映の『ゴーバスターズ』を一緒に観てきたんですが、タイトルを見ましたら後処理をやってるスタッフがみんな過去に私の映像を作ってくれた人たちなんです。映像を観ると子どもたちは喜ぶんですが、恐怖心もあるみたいなんですね。でも恐怖心を与えちゃダメだとなると映像が生きてこない。その辺の兼ね合いが難しいんです。映像作りを目指している方は、思い切ってやるか、全くやらないかのどちらかしかないと思います。

――『極底探険船ポーラーボーラ』はアメリカとの合作でした。

佐川  まずプロデューサーのランキン・バスが、何故日本に発注したか。当時『スターウォーズ』の製作費が800万ドルだったのですが、ランキン・バスプロとしてはそんな予算の作品はできない、日本の素晴らしいミニチュア技術を使ってやってみようという事で取り組んだのが、この『ポーラーボーラ』と『バミューダの謎』でした。

 『ポーラーボーラ』は、6月ぐらいに長野県の大正池で撮影しましたが、国立公園なので本来は撮影禁止な処を、アメリカの映画会社が撮影したいのなら許可しましょうという事になりました。主演のリチャード・ブーンはハリウッドでは一流の俳優なので、契約に色んな条件があるんです。30キロ以内は自動車、それを越すとヘリコプターで移動というのがあったのですが、山の中、ましてや大正池でヘリコプターなんて使えません。ですからかわりにカゴを作ってスタッフが持って移動なんて事がありました(笑)。

 大正池は常にガスっていて(霧があって)、人物とダイナソア(恐竜)の絡みの多くはブルーバック合成だったのですが、フィルムだと天気や湿度がちょっとでも変わると色が違ってしまうんです。何回も何回も撮影して、フィルム合成しました。DVDで観ると判ると思うんですが、ブルーバックで合成したとは判りません。一箇所だけ、木のバックにダイナソアが写るカットでは木の葉がグリーンなのでブルーバックが抜け切らずバレてしまってますが、他のカットに関しては合成かどうか判らない仕上がりになっていたと思います。合成は日本エフェクトセンターだったのですが、合成時に本来は使ってはいけないフィルターを無理矢理重ねてもらって、ガスった雰囲気を出しました。

 (合成の継ぎ目に)ブルーバックのラインは70%ぐらいの確率で出る恐れがあります。映画館のスクリーンではビスタサイズでは(フィルム上で)1000分の3から1000分の5ミリだと判らないんですが、それを越えてしまうと(肉眼で判るぐらいに)出てしまいます。出たところにはもう一度背景の景色を焼き込む事でラインを消す訳です。そうする事で日本の技術をランキン・バスに見せようと。これだけは覚えておいてほしいのですが、合成は50%と50%の素材を足しても100%になりません。それぞれ100%の素材があって100%の映像になるんです。お蔭様でランキン・バスはありがとうと拍手して作品を持って帰りました。アメリカのプロデューサーは素晴らしいんです。合成に使うキャメラはバイブレーション(フレームのブレ)が出るものはダメ、フィルムはこれ、エマルジョンはこれ、合成後のフィルムはこれと、全部知っています。知っているからこそそれだけの要求をしてくるんです。ですからこちらもどのフィルム、どの機材を使ったかを明示してテスト撮影はきっちり行い納得して貰いました。当初は絶対に信用してくれませんでしたが、それからはお任せしますという事になりました。直接担当したのは合成の会社ですが、そんな事があって、ランキンとはその後何作か一緒に仕事が出来ました。 

  (後編につづく) 

  いろいろあるよ、いろいろね 


 『非公認戦隊アキバレンジャー シーズン痛』、今回も無事に?終了となりました。前作以上に「これいいのか?」と思ってしまうネタが続出でしたが、最終回は総集編と見せかけてまさかの結末。ある意味ひどい(半分褒め言葉)最終回だったと思います。ああいうラストは「公認様」ではまず不可能でしょうし。そういえば本シリーズの田崎竜太監督は『さらば仮面ライダー電王』の時に、「タイトルにさらばとついたらシリーズが続いてゆく宣言」と発言されていましたf^_^;。皮肉の効いた(効き過ぎた)ラストからすると、次期シーズン(惨?散?)の思わぬ型での登場を期待したいところです。

ところで、『緯度G大作戦秋』にゲスト出演されたまついえつこさんが第 lang=EN-US>8痛「妄想美鬪」前半の秋葉原のシーンで何箇所かエキストラとして映っています。月公開『009ノ1』にもエキストラとして参加との事。本業ではホラー映画『asfi in アイドル怪談(ホラー)』で音楽のほか編集と音響効果を担当されています。

 『ウルトラマンギンガ』、久々の30分シリーズで、期待半分不安半分でしたが、青春ドラマ的要素を盛り込んで中々独自の展開でした。ウルトラマンや怪獣が人形にされていて、怪獣人形が変身アイテムというのは、同じ趣向だった『ディケイド』や『ゴーカイジャー』と比べても玩具への親近感という点で面白く、しかも主人公も最初は怪獣に変身した上でウルトラマンへ二段変身というのは驚きました。メインの登場人物が10代の少年少女で、物語の舞台が限定されていたりと、『グリッドマン』を彷彿とさせる設定はウルトラシリーズとしては異色ですが、ミニチュア特撮は小規模ながら丁寧な作りで、30分×1年間のテレビシリーズの製作が困難と思われる中で頑張っている作品だと思います。第一部終了といったところですが、次に繋げていって欲しいものです。

 『緊急指令10-4-10-10』が遂に全話DVD化、先月第1集が発売されました。都内では売り切れの店がかなりあったようです。仕入れた数が少なかったのかも知れませんが、売れているのは本作のソフト化がそれだけ待たれていたという事でしょう。本放映から41年、最初のソフト化から26年、LD発売から21年、CS放映があったとは言え円谷作品では全話ソフト化が遅れていただけに何とも感慨深いです。

特撮番組として観た場合、造形物の出来の粗さが目についてしまう本作ですが、最終回に代表されるように「善意の人々が無線を使って人助けをする」企画当初の狙いはほぼ成功したのではと思います。それと今更ながら実感するのはレギュラー俳優陣がいかに良かったかですね。出演者の実年齢と役の年齢に結構ギャップがあるのを知った時は驚いたものでしたが、それだけ演技力の確かな俳優さんを選んでいたのでしょう。'88年発行『円谷プロ特撮大鑑』によると登場人物を一新した新作企画があったそうですが(文中『アルプスの少女ハイジ』の高視聴率が引き合いに出されている事から'74年頃?)、本作に匹敵するキャスティングでない限り例え造形物の完成度が上がっても作品としては見劣りしたのではないかと思います。

 それにしても第3話の「アナタ高校生にもなってまだ怪獣もの観てんの?」はトラウマな台詞ですな。1972年の本放映当時、私は小学校3年でしたが、高校生になって怪獣ものを観ていると女の人から軽蔑されるんだと強烈に思ったものでした。しかしこれが当時の一般的な認識だった訳です。私の場合、高校生になった頃には『ファンコレ』や『宇宙船』があり、怪獣ものを観ている大人は自分の他にもいるんだなと認識しましたが、これらの本を最初に作った世代の人達は『10-4』当時、実際に高校生ぐらいで怪獣ものを観ていたかと思うと、自分達にはない苦労をされていたんだと思いますね。『アキバレンジャー』のような番組をやっている現在は隔世の感があります。

 夏恒例のライダー&戦隊劇場版や『ウルフェス』が開催されていますが、国産特撮ファンとしても今夏最大の注目作といえば『パシフィック・リム』でしょう。サワリの映像を一目観て、この映画の監督は日本の特撮、アニメが相当好きだなと思わされました。未見ですが早く観なければいけませんね。

  今年の『緯度G大作戦』は12月に開催予定です。それではまた、近い内にお会いしましょう。