2015年 第2号 Vol.173
 
 編集・構成 奥貫 晃

 
 発行人:今井 康了
 発行:日本特撮ファンクラブG
 

 はじめに

 猛暑の後に不安定な気候が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。 特に関東・東北の一部地域では9月10日に起きました大雨の影響で洪水が起きてしまいました。被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。また、現地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。 さてこの程、『緯度G大作戦2015』の日にちが11月1日(日曜)に決まりました。内容についてはGホームページにて追ってお知らせしますが、只今各プログラムを準備中です。皆様のお越しをお待ちしています。どうかご期待下さい。


  ユナイト!ウルトラマンX

 第1話、印象的だったのは主人公・大空大地が初めての変身でいきなり数十メートルの目線になり、ウルトラマンの姿のまま足がすくんでしまうシーン。もし自分がいきなり巨大化したら確かにそうなるだろうという描写で、作り手の「自分ならこう作る」姿勢を実感させられ、こうした描写が一つでもあると毎回が楽しみになってしまうものです。

 今回の大きな特色はウルトラマンが乗り移っているのが主人公の体ではなく通信機という『グリッドマン』的シチュエーションで、大地とXの会話が普段から頻繁に描かれている事でしょう。『ウルトラシリーズ』では、ウルトラマンと変身前の人間との関係にいくつかのパターンがあり、それがそれぞれの作品の個性になってきました。その中でも憑依型は初代以来のオーソドックスなパターンですが、『ザ☆ウルトラマン』で初めて主人公とウルトラマンがはっきり別人格として描かれ、以来『ウルトラマンG』、最近では『ウルトラマンサーガ』と受け継がれ、今回はこのパターンの決定版を目指しているように思います。更に、Xは実体を失っており実体化するには大地の存在が必要だったり、モンスアーマーはウルトラマン側の能力ではなく防衛チームの開発によるものだったりと、主人公を含めた人間とウルトラマンの関係を対等にしようという姿勢が感じられます。 引き続き登場のスパークドールズの設定は、オーパーツが実体化するという、前作とは打って変わった設定となったのは意外でした。変身アイテムだった前作では感情移入しやすい、怪獣ごっこに取り入れ易そうな反面、怪獣やウルトラマンまでが人間が乗って操縦する巨大ロボットか操り人形のように扱われているのにはいささか抵抗がありました。それが特に田口清隆監督の初期3話では久しぶりに防衛チームが怪獣の生態や特長を分析するところから始まる、「怪獣もの」としてのウルトラマンを目指した作りになっているのは好感が持てました。これが坂本浩一監督になるとまた違ったタッチになるのですが。 防衛チームXioは10人体制で役割分担をはっきりさせている比較的リアル指向のチームで、『ガイア』XIGの流れを汲む編成のチームがようやく出てきたのは歓迎したいところです。しかし、アスナやルイ、グルマン博士以外は一人ひとりの描き分けは物足りない感があり、出番の多いワタルとハヤトでさえ(ワタルは準主役のエピソードがあったものの)隊内では殆ど二人一組に扱われているのは残念です。もっと彼ら一人ひとりの個性を描いたエピソードを出させてほしいところです。

 久々に航空戦力の登場となったメインメカは自動車が合体してコックピットになるという、リアル性はともかく玩具としては面白いギミックで(しかしハンドルで飛行機を操縦している絵はどうも可笑しく見えてしまいます)、初めは車で出動、非常事態になると航空機パーツを自動操縦で呼び寄せ合体するのがパターンのようですが、次第にドッキングの描写は少なくなっているようなf^_^;。出来れば基地内でドッキングさせる描写が見たいです。

 様々な趣向を凝らしているものの、ウルトラシリーズとしてはオーソドックスな作りを目指している感のある本作、マックス~カイトのゲストに続きUPGのヒカル、ショウ、アリサのゲスト編もあるそうで、まさか「スパークドールズにこんな使い方があるのか!」なんて事になるのか、今後の展開を見守っていきたいところです。基本設定をどう生かしていくかが課題だと思います。

 来年のウルトラ50周年に向けてか『X』以外にもウルトラ関係ではいくつか動きがありました。 7月には突然謎のYouTube動画『UlTRAMANn/a』が公開、真っ昼間の渋谷の街でザラガスと闘うウルトラマンの体表が鏡面状に描かれているCGならではの表現も去る事ながら、『ウルトラマン』本放映時に金城哲夫氏が出された「これまで怪獣とウルトラマンの闘いは人っ子ひとりいない場所で行われていたが、活動する都会で出来ないか」という旨の意見があった事を思うと、こうした形で実現しているのは感慨深いものがあります。今後の作品展開やスタッフについては不明ですが、国内で製作しているとすればCG特撮の今後にかなり期待が持てそうです。

 もう一つはやはりインターネット配信による企画『日本アニメ(―ター)見本市』で、内山まもる作『ザ・ウルトラマン ジャッカル編(原題『さよならウルトラ兄弟』)』をアニメ化した『ザ・ウルトラマン ジャッカル対ウルトラマン』。7~8分のショートフィルムで製作されると発表され、果たしてどんな内容になるか注目されていましたが、予想通りというか、ストーリー全体をダイジェスト的にまとめたものとなっていました。短い時間なので満足とはいかないまでも、見方を変えれば単行本ほぼ1冊分のストーリーを上手くまとめたのではないかとも思います。出演声優さんが最小限なのも含め、言ってみれば作りはかつての東宝特撮8ミリ映画の現代版といったところでしょうか。 原作漫画の画風を再現しつつ、冒頭のゼットン対ウルトラマンの闘いでは「さらばウルトラマン」のイメージを取り入れ、原作では瞬殺に近かった初代ウルトラマンが意外に善戦していたり、終盤近くのジャッカル対メロスの一騎討ちでは短いながら大魔王ジャッカルがブラックキング等怪獣に変身しながら闘うところは、原作では大魔王の変身能力は中盤以降出てこないので、上手く膨らませていると思いました。 気になったのは選曲で、主に使用されている『帰ってきたウルトラマン』からの楽曲は合っているようないないような微妙な印象を受けました。これは人間側のドラマに重点を置いた『帰ってきた~』はじめ第二期ウルトラの世界と、第二期ウルトラの延長線上ではあるけれどドラマはあくまでウルトラマンが中心で人間はほとんど絡まない内山ウルトラ独自の世界という違いからでしょうか(ウルトラファミリーやウルトラの国はコミカライズや特集記事には頻繁に出てきてもテレビ本編にはそれ程には出ていません)。既製曲を使うならむしろ『ザ☆ウルトラマン』('79年のアニメシリーズ、念のため)の冬木作品や『メビウス』辺りからの楽曲の方が合うのではと思いましたがどうでしょう。 同企画では春に『グリッドマン』の続編的内容のショートフィルムが発表されていますが、あくまで自由な題材で作るショートフィルムという企画のようで、特にTVシリーズや劇場映画でやる訳ではなさそうです。しかし何より初の漫画連載から丸40年、実写特撮のコミカライズ作品が逆に映像化された事は私の知る限り前列がなく、それだけでも一見の価値はあるのではと思います。

 いろいろあるよ、いろいろね

 終了を迎えたTOKYO MXテレビの円谷劇場『怪奇大作戦』、改めて観ると「幻の死神」のような、比較的低予算と思われるエピソードでも小規模ながらプールに水を張ったミニチュア撮影をやっており、後の作品でこうした水物特撮は『'80』では2本だけ、平成ウルトラシリーズでは『ティガ』最終回が最後となった事を考えると、当時のテレビ映画がいかに金をかけていたかを実感させられます。 後番組はアナウンスされず、このまま「円谷劇場」は無くなるのかが気になりますが、もし続くならソフト化の可能性が低い昼ドラや長時間ドラマ枠の作品はできないだろうかと思います。

 新聞記者の傍ら、幾つかのヒーローイベントを手掛けてきた鈴木美潮氏著『ヒーローたちの戦いは報われたか』が夏に発売されました。『月光仮面』に始まり『ウルトラマン』、『仮面ライダー』、『ゴレンジャー』と現れ現在も続く戦後国産特撮ヒーローの歴史と世の中の流れによる作品内容の変遷を、著者の体験を交えて語ってゆく本文に加え、名作、異色作エピソード紹介から裏方へのエールと様々な角度から作品を捉えています。そして終盤での、特撮ヒーロー番組を取り巻く状況を踏まえつつ、それでも日本でなぜこのジャンルの作品が作られ支持され続けているのかに踏み込んだ一文には目頭が熱くさせられました。一部取りこぼした作品はあるものの、何より読みやすい文体で、我々のような特撮ファンだけでなく、むしろ普段特撮ヒーローにあまり関心がないない人が興味を持つきっかけになればと感じさせる一冊でした。

 卒寿を迎えた渡辺宙明先生が音楽を担当された『20世紀未来テデロス』(イッツコムチャンネル)。アイドルグループ・asfiのメンバーが巨大ロボットに乗り込んで怪獣に立ち向かう、さながら日本版『パシフィック・リム』といった内容(予算的にはともかく)でしたが、最終回は宇宙恐竜キングゴドラスに手も足も出ないテデロス1~6号機の大ピンチに、新型機テデロス7号機が颯爽と現れキングゴドラスを倒し何処へともなく去ってゆくクライマックスは『マジンガーZ対暗黒大将軍』の台詞回しそのまま(「マジンガー」を「テデロス」に、言葉遣いを女言葉に変えただけ)という驚異のラストとなりましたf^_^;。しかしそこまでやるなら、キングゴドラスの断末魔はゴジラ+ガメラの鳴き声にして欲しかったものです。現在は鳴き声関係も権利関係がうるさいのでしょうか。

 『仮面ライダー』シリーズは10月より『仮面ライダーゴースト』がスタート。『ドライブ』実質的最終回となる47話では『風雲ライオン丸』の快傑ライオン丸ゲスト編「蛇ヶ谷にライオン丸を見た」を彷彿とさせる?登場をしていました。モチーフはいろいろと手を変え品を変えているなと思いますが、作品のカラー、内容を左右するのはチーフプロデューサーとメイン脚本家でしょう。それにしても近年のライダー(『鎧武』から?)の番組フォーマットで気になるのは中CMが多すぎる事で、特にオープニングからAパートが提供クレジットのみでCMを挟まないので3回の中CMが中盤~後半に集中、数分の間隔でCMが入る事になり落ち着かない事この上ありません(録画で飛ばし見出来るにしても)。恐らく視聴率対策など、相応の事情あっての事だとは思いますが何とかして欲しいものです。

 『民王』最終回にギャバン、シャリバンと仮面ライダーWのフィリップが面接で対決?に驚いていたのも束の間、来年公開の新作ゴジラ映画のタイトルが噂通り『シン・ゴジラ』と発表されました。メインの出演者は竹之内豊、長谷川博巳、石原さとみ各氏、エグゼクティブプロデューサーは『TRICK』の山内章弘氏との事。有名俳優の起用は珍しくないゴジラ映画ですが、『進撃の巨人』からのスライド組がいるとはいえフジテレビ月9ドラマばりのメインキャストは意外でした。しかしかつて『ウルトラマンティガ』や『仮面ライダークウガ』がこれまでの特撮ヒーローもののイメージにとらわれないキャスティングでシリーズの新境地を切り開いた事を思うとあながち否定的な事は言えないかと思います。 既に都内各所で撮影が行われているようで、9月6日にはJR蒲田駅付近でロケがあったようです(タイトルはこの際の駅内の掲示板から判明)。内容についてもごく断片的に伝え聞いていますが、かなりリアル指向な内容かなという感じです(具体的にはまだここに書けませんが)。今後の動向を見守ってゆくしかないですね。

それではまた、近い内にお会いしましょう。