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特撮のDNA展in福島 |
去る9月24、25の両日、Gスタッフ5名で福島県で開催されている『特撮のDNA展』に行って参りました。 交通の不便な場所という事で、今回は車での移動だったのですが、福島県に入ってからの道中、建物が疎らな地域に「○○団地」との行先表示がありました。団地というと鉄筋何階建ての集合住宅が何棟も建っているイメージがあるので何処にあるのかと思っていたのですが、プレハブの仮設住宅の事だったのです。こうした仮設住宅はこの後の道中でも何箇所かありました。車内から見た目にも建物が傷んでいるのが判り、震災の傷が深い事を実感させられました。 さて会場到着。会場の建物は公民館か学校のような建物でした。入館すると早速ゴジラがお出迎えです。お客の入りは地元の家族連れを中心にまずまずと言ったところでした。会場を進んでゆくと『ゴジラ』第1作から比較的最近の『超星神』シリーズまでの東宝特撮作品で使われたミニチュア、着ぐるみといった立体物に、ピクトリアルスケッチやデザイン画とかなりの量が展示されていました。古い作品はレプリカもありましたが、それでも金属製や木製のミニチュアは現存している物が多くあり、それぞれ材料が明記されているのは興味を引きました。『ゴジラ』第1作に登場した東海道線客車は窓ガラスの部分にガラスが使われており、こうしたパーツはもう少し後になるとアクリルのような材料が使われるようになるのでしょう。特撮スタッフが新しい材料を探すのに貪欲で、常にプラスチック等化学製品の工場を回っていたというエピソードの一端を垣間見る思いでした。 立体物もさる事ながら、ピクトリアルスケッチの展示がかなり豊富で、『宇宙大戦争』などはかなり貴重なものがありました。印刷物で見た事のあるものでも現物はまた違った迫力があるものです。他にはガイナックス福島が主催のためか会場にはアニメーションのメイキング過程の展示等が常設されていました。 古い建物で交通が不便な場所でしたが、手作り感もあって質量共にかなり充実した内容の展示だったと思います。他の地区も巡回するようなのでもしお近くで開催されるようなら行ってみてはどうでしょうか。 それにしても、地元の家族連れと思しき30から50代位のお客さんが展示を見ながら「ゴジラの原作って漫画だよね」、「(『宇宙大戦争』は)昭和34年じゃあ絶対白黒でしょう」など、真顔で会話しているのが聞こえてきて、我々Gスタッフ全員は「そうじゃないよ!」と口を挟みたくなる衝動を抑えるのに必死だったのは言うまでもありません(^_^;)。 |
回想・CD普及30年 |
私事になりますが、初めてのCDプレーヤーは'86年暮れに秋葉原の電器店にて購入したソニーのCDラジカセでした。翌'87年より特撮関連のサントラCDが続々発売されるようになり、事実上この年が特撮CD元年と言えるでしょう。早いもので30年になろうとしていますが、この機会にアナログ盤からCDへ移り変わった'86~'88年前後の事を振り返ってみようと思います。 |
訃報 |
【池谷仙克さん】 10月25日、癌のため御逝去。享年76歳。 円谷プロ初期作品より美術助手を務め、『ウルトラセブン』後半の美術、怪獣デザイン担当以降、'70年代第二次怪獣ブーム期に円谷プロ、宣弘社、日本現代企画作品に参加。そして実相寺昭雄監督作品を中心としたご活躍は説明の必要はないと思います。特撮界だけでなく日本の映像界においても美術の第一人者と言っていいでしょう。 「第1期ウルトラシリーズ」に再放送で接し、『帰ってきたウルトラマン』を迎えた身としては、学年雑誌に発表されたアーストロン、タッコング、キングザウルス三世、ツインテールといった数体の新怪獣のイラスト(おそらくデザイン画)を見た時のワクワク感は忘れられません。その後『シルバー仮面』、『ダイゴロウ対ゴリアス』、『ファイヤーマン』で、池谷さんがデザインされた怪獣、宇宙人は派手さはないけれど常に品のあるデザインでした。怪獣デザインにブランドがあるとすれば、池谷さんのデザインされた怪獣やヒーロー達はウルトラ怪獣のみならず国産怪獣の系譜に確固とした一ブランドを築いたのではないでしょうか。別項で触れた『シルバー仮面/アイアンキング/レッドバロン/マッハバロン』主題歌集アルバムのジャケットを飾る、シルバー仮面とチグリス星人が組み合うカットが池谷デザインの白眉だと思います。 一方、本編美術で印象に残っているのは同じく『シルバー仮面』等身大編での格闘シーンに使われたセットが、後半のジャイアント編より実は手間と予算が掛かっていたというお話でした。特撮ヒーロー作品としては後にも先にも見られない格闘シーンが続出しましたが、特にある回でシルバー仮面が墓地で敵宇宙人と格闘し、卒塔婆を引っこ抜いて武器にする描写がありました。画面に映っている卒塔婆や墓石は当然撮影のために造られたものだと思いますが、そういう事を感じさせない仕上がりでした。こうした仕事が実相寺監督はじめ様々な監督からの信頼を得ていたのだと思います。 慎んで御冥福をお祈り申し上げます。 【Jean-Jacques Perreyさん】 11月4日、肺癌に伴う合併症のため御逝去。享年87歳。 電子音楽のパイオニアとして、ディズニーランドのエレクトリカルパレードのテーマ音楽の作曲が一般には知られています。国内の特撮関係ではお名前がクレジットされてはいませんが、『ウルトラマンタロウ』後半など、各社の作品で使用された流用曲のいくつかを作曲されていました。主に'70年代、製作会社や担当音楽家の違いに関係なく、複数の特撮、アニメ等テレビ番組やCMで共通して使われる楽曲があり、どういった出典なのか長らく不明でした。それが2000年代に入り、ライターの早川優さんより海外のレコードからの、映像作品等様々なメディアでの使用を目的とした所謂著作権フリーのライブラリー楽曲との情報を得ました。そしてJean-Jacques Perreyさんの作品が『GOOD MOOG』のタイトルでCD化されている事が判ったのです(『緯度G大作戦2003』トークショー、本会報ではVol.144収録)。まるで夢の中に居るような心地にさせてくれる、シンセサイザーによる楽曲の数々は、『タロウ』では日暮雅信氏のオリジナル曲とは異質のタッチでありながら同作の世界と妙に合っており、音楽世界を拡げる事に 貢献していました。これらの楽曲の多くは、現在ではインターネットで「モンパルナス2000」で検索すると聴く事が出来ます。40~50代の方ならおそらく聴き覚えのある曲があると思います。楽器の音色から受ける印象より意外に古い年代の楽曲があり、先駆者だった事を実感させられます。 慎んで御冥福をお祈り申し上げます。 |
いろいろあるよ、いろいろね |
『ウルトラマンオーブ』、先日の回はそれまでと一転して渋川隊員をメインにしたエピソードで、演じる柳沢慎吾氏をフィーチャーした好編編に仕上がっていました。そもそもVTL隊の通信機のデザインが柳沢氏が物真似に使っているタバコの空箱がモチーフなのが笑ってしまいます。父娘のエピソードという、笑って泣かせる展開もさる事ながら、意識したかどうかシャプレー星人の手口が何気にスペル星人と同じなのには驚きました。 その前には6話に渡りべリアル(とゾフィ)の力・サンダーブレスターへのフュージョンアップを通し、本来の姿を取り戻すオーブと、ガイの過去が語られる、ウルトラシリーズでも異色の展開となりました。悪の力でパワーアップというと『大怪獣モノ』の大巨人と同じ、しかも同作冒頭に出てくる男女グループは言わばSSPと同業者?で、意外に共通点があります。脚本が同じ中野貴雄氏が関わっているせいかもしれません。それにしても主人公が人間体で100年以上前に地球に来ていたとはシリーズ初ですがウルトラマンならあり得る事で、従来の防衛チームの一隊員ではなく謎の風来坊という設定がここに来て生きてきたように思います。他にも細かい処では初期の回で(巨大ヒーローものでこれを言っちゃオシマイだろうという)質量保存の法則が台詞に出てきたり、地球人にとっては部外者だと指摘されたり、ウルトラマンならあり得るが、劇中であまり触れられなかった事を何気にやっていますね。 来年春に劇場版が控えているそうですが来月でもう最終回、半年の放映は短いと思ってしまいます。それでも『ギンガ』『ギンガS』、『X』と一作毎に本数を増やし、『列伝』内番組から今回遂に番組タイトルとなった訳です。「(人形化やデータ化で)一度失ってしまった本来の姿を取り戻す」というのはこのテレ東ウルトラシリーズに共通するテーマで、劇中のヒーローだけでなく番組自体もこのテーマを体現してきたように思います。これまでの枠組みに囚われないで作っていこうという姿勢が今回は特に顕著ですが、どんな最終回を迎えるか見届けたいところです。 前号で児童誌について触れましたが、「てれびくん」12月号に『シン・ゴジラ』の記事がありました。「巨災対の尾頭ヒロミお姉さんにゴジラの形態変化についてインタビュー」という形式で、劇中の台詞「まずは君が落ち着け」がキャッチフレーズの様に入っていたり、児童誌としては妙にマニアックな箇所がありました。記事自体は白黒見開き2ページの簡素なもので、仮面ライダーやウルトラマンがカラーページを何ページも占めているのに比べるとかなり小さな扱い、しかも「映画大ヒット記念緊急特集」と『シン・ゴジラ』を取り上げたのはどうも今回が初めてのようでした。現在児童層でゴジラの認知度はどの程度なのか気になるところです。ネット上では子どもには判りにくいのではと親が心配していたが「ゴジラが実際に現れたらどうなるかがよく判った」との反応だった等、決して悪くはないようです。10月に行われたあるパーティーで、『シン・ゴジラ』を観て以来ゴジラに夢中になっているという小学校2年の男の子がいました。小学校2年というと、初めて封切で観たゴジラ映画がそれぞれ1955年前後生まれの第1期怪獣ブーム 世代は『キングコング対ゴジラ』、私は『ゴジラ対ヘドラ』、Gスタッフ向畠は『ゴジラVSビオランテ』と小学校2年の時期となります。この位の年齢でどのゴジラ映画を観たかがその後の人生に影響しているように思います。彼がこの後どうなってゆくか、興味深いところです。 2016年も11月半ばとなり、本日はG祭開催日となりました。あと1ケ月半で年末です。今年の国内特撮界では全く未知数だった『シン・ゴジラ』の大ヒットが後半をかっさらっていった感があります。おそらくこの先2016年は『シン・ゴジラ』の年として振り返られるようになると思います。一般層に広く受け入れられたのは喜ばしい事ですが、これを今後どう繋げてゆくかでしょう。 それでは、まだちょっと早いですが来年もよろしくお願いします。 |