2017年 第1号 Vol.178
 
 編集・構成 奥貫 晃

 
 発行人:今井 康了
 発行:日本特撮ファンクラブG
 

  はじめに

 
九州地方の豪雨で被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。
さて、ご無沙汰しております。イベントや劇場映画盛りだくさんの夏ですが、まずは先日ブルーレイ/DVDが発売されたこの作品から。

  『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、お借りします』

 前作『劇場版ウルトラマンX 来たぞ!われらのウルトラマン』に続き田口清隆監督の登板となりましたが、怪獣映画を目指した前作に対しヒーロー映画を目指したという本作は、敵味方共に多くのキャラクターが入り乱れる内容となっていました。3分間の時間制限はどこへやら、戦闘シーンが長い印象がありましたが、レギュラーメンバーに加え、ゲストキャラクターが強烈な個性で(悪ボス役にお笑い系の人を使うのは何か信念があるのでしょうか)、主人公たちと彼らとのやり取りが本編の大半を占めており、それぞれのキャラクターの見せ場の連続、オールスター映画的な盛り上がりこそが本作の肝なのだと思いました。 『X』の大地との変身前の共演、W変身は前作になかった見所ですが、セブン親子以外の先輩ヒーローが揃いも揃って助けられる側なのはこれまであまりなく、そうした展開が不自然なく受け入れられたのは主演俳優が『ギンガ』以降では最年長なせいでしょう。他作品との繋がりが『X』とは劇場版前作のラストから、本作ラストはテレビ『ゼロクロニクル』に繋がっているのはちょっと前ならなかった事で心憎い配慮でした。

  '特撮に目を向けると『シン・ゴジラ』がフルCGになった現在、ミニチュア特撮を堪能させてくれるのは好感が持てました。ミニチュア特撮が今後どうなってゆくか判りませんが、デジタル技術を盛り込みつつ、アナログでしか出来ない映像作りを追求する姿勢は失わないで欲しいものです。デジタル化がスムーズだったアニメに比べ、実写特撮はCGとの兼ね合いにどうしても葛藤がありますが、これからもこうした葛藤は続いていくのでしょう。 前作ほどの傑作ではありませんでしたが、テレビシリーズを観て各々の登場人物に親しんできた観客としては楽しめる内容だったと思います。

  フュージョンライズ!『ウルトラマンジード』

 テレ東ウルトラシリーズとして『ギンガ』から5作目、丸1年とはいかないもののテレビシリーズが5年連続製作されるのはウルトラシリーズ初で、これは称賛に値すると思います。さて、今回は主人公がべリアルの息子という設定で(世代的にベリアルはウルトラの父母と同世代?)、演ずるは『べリアル銀河帝国』に出演していた濱田龍臣君。ウルトラシリーズで主演俳優がそれ以前のシリーズに出演歴があるケースはこれまでありましたがいずれもゲストで、映画1作とは言え準主役級からの昇進は画期的でしょう。年齢も16歳と、前3作で主役の年齢が1作毎に上がっていたのが一気に若返り、遂に'00年代『仮面ライダークウガ』や『ゴジラ×メガギラス』の頃に生まれた世代からヒーロー役者が出てきたかという感じです。決め台詞が『ライダー』っぽいのはどうかと思いますし、変身後のリクの心理描写がジードの顔にリクの顔が直接重なる仮面のような描写なのは違和感を覚えます。また、ソリッドバーニングのセブン+レオのコンセプトは悪くないもののメカっぽいデザインと描写はいささか抵抗がありますね(鎧 の設定らしいですが)。金属的であっても機械的ではない、肌なのか服なのか判らないのがウルトラマンだと思うので。しかし『ギンガ』以降のウルトラシリーズは変身前と変身後の関係性がそれぞれ異なるんですね。前作ではセブン系のガイがオーブの人間体と思いきや、ガイの方が本来の姿で、「ウルトラの力を授かった人間型の宇宙人」というティガの流れを汲んだ設定だったのは意外でした。今回の「べリアルの息子」という設定は実はタロウに近いように思います。
 
 登場人物で気になるのはゼロが乗り移る伊賀栗レイトでしょう。ウルトラマンゼロ初のテレビシリーズレギュラーですが、今回は戦いのダメージから変身は出来るものの充分に戦えない設定で、ある意味『レオ』におけるセブン~ダンの発展型と言えるのではないでしょうか。妻子ある30代男性は「ネクスト」以来ですが今回は市井のごく普通のサラリーマンで、話にどう絡んでくるか興味深いところです。脚本に起用された乙一(安達寛高)氏は子どもの時分にウルトラシリーズを観た事がなく、ご子息と『X』を観ていてハマっていったそうで、こうしたシリーズについてよく知らない人を起用する事で新味を出そうとしているようです。また、前作『オーブ』で『レオ』の頃からの課題だった防衛チーム中心でなくともドラマが成立する事を実現出来た事は大きいと思います。防衛チームの存在はウルトラシリーズの大きな魅力ではありますが、予算的に大きな枷だった事も事実で、これで基本設定に幅を持たせる事が出来るようになったのではないでしょうか。

 様々な新機軸を盛り込んでいますが、良くも悪くも過去のシリーズの遺産で成り立っているのも事実で、そろそろ革新的な作品に出てきて欲しいところです。

  ところで、これは全くの余談ですが、『ジード』第1話放映と同日のNHK朝ドラ『ひょっこ』第84話劇中の日付が、『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第1号」が放映された昭和41年7月17日で、これは偶然なのか狙ったのか。ヒロインの叔父からインバール作戦での戦争体験が語られる回の放映日が、同作戦が行われたのと同じ日だそうで、そうなるとあながち偶然ではないように思えるのですが果たして…。キャスティングではヒロインの父親と元彼と同僚が仮面ライダーの他、キョウリュウレッドや巨災対関係、都庁関係の方々が出ていて、つい特撮目線で観てしまいます。何よりヒロイン役の有村架純ちゃんは昨年の紅白会場にゴジラが接近しても全く動じませんでしたからね^_^;。ヒーロー出身俳優が近年重宝される理由の一つは1年間主役級で同じ撮影現場を経験している事が大きいのだそうです。

  『シン・ゴジラ』特典映像

 3月に発売された『シン・ゴジラ』BD/DVDソフト、もう買われた方は多いかと思います。意外にもオーディオコメンタリーやインタビューはなく、豪華版では2枚に渡る特典ディスクはメイキング等の他、特に圧巻だったのは劇中での膨大なニュース映像の素材でしょう。本編中でもニュース映像は頻繁に出てきましたが、使用されたのはごく一部に過ぎず、何より各テレビ局毎の映像が作られているのには驚きました。おそらく電器店のテレビ売り場に並ぶ、各テレビ局の画像が一斉にゴジラ関連の緊急報道番組に切り替わる描写を狙ってのものでしょう。そのためか切り替わる直前の番組映像、更には話題になった、緊急番組の中で唯一通常番組を放送している某在京ローカル局と思われる映像まで作ってあり、そこまで作り込んで費用は問題なかったのかと気になってしまいました。ソフトの特典に収録する事はある程度前提だったとは思いますが。 しかし通して観ていると、映像資料というよりはもう一つの『シン・ゴジラ』というか、映画の世界の住人になったような気分が味わえてしまうのです。昨年11月3日、劇中でのゴジラ出現の日に合わせて当日にはTwitterで実況が盛り上がっていましたが、正にそれに近い感覚でしょう。しかしこれだけの映像があるとなると、これまでの作品でも今回程ではないにしろこの種のテレビ放送映像素材があった筈で(『ビオランテ』のデーモン小暮出演シーン等)、どの程度撮られていたのか、現在残っているのかが気になります。

  訃報

 【坂野義光さん】
 5月7日、くも膜下出血のため御逝去。享年86歳。『緯度G大作戦2014』にゲストに来ていだだき、貴重なお話をお話くださいました。 劇場作品は『ゴジラ対ヘドラ』1作のみですが、その映像とメッセージ性で我々に強烈な印象を植え付けました。個人的にこの作品で印象に残っているシーンは雀荘のシーンです。ゴジラとヘドラが戦っている場所と雀荘がどれぐらい離れているかは判りませんが、「何でこんな時に麻雀やってんだ?」と思っているとそこにゴジラに振り回されたヘドラの破片が飛び込んできて、次のカットでは麻雀をやっていたサラリーマンは全員死んでいる衝撃。自身の身に降りかかるまでその存在に気付かない、公害の本当の恐ろしさを描いている秀逸な描写だと思っています。 その後は協力監督として、やはり環境問題を扱った『ノストラダムスの大予言』、プロデューサーとしてアニメ『テクノポリス21C』の他、テーマパークや博覧会の展示映像、記録映画を多数監督、プロデュースされました。近年ではレジェンダリー版『Godilla』に、当初3D映画として企画がスタートした段階よりエグゼクティブプロデューサーとして関わり、ゴジラ復活に尽力されました。完成した作品は狙い通りではなかったそうですが、ムートーのキャラクターは坂野さんの趣向が出ていたように思います。その後もヘドラの新作企画を温めていらしたとの事で、晩年まで映像製作に貪欲に取り組まれていた姿勢には頭が下がる思いです。

  慎んで御冥福をお祈り申し上げます。
 
 【加藤春哉さん】
  昨年の砧同友会で御逝去が明らかになったとの事です。'28年生まれ。『キングコング対ゴジラ』バシフィック製薬社員、『フランケンシュタイン対地底怪獣』テレビ局ディレクター、『ウルトラQ』毎日新報記者等々、'60年代東宝映画で脇役ながらその風貌で印象に残る俳優さんでした。私事になりますが、従姉妹の結婚式の司会を担当して下さった事がありました。奇しくも当日は『ゴジラVSスペースゴジラ』封切り日で、お忙しいところお話しする事が出来たのですが、映画の仕事は拘束日数が長いので避けており、現在は司会業を中心に活動されているとの事でした。その後もしばらく司会業を続けていらしたそうで、お元気にされているか気になっていたのですが残念です。

  慎んで御冥福をお祈り申し上げます。

 【山川啓介さん】
  7月24日、肺癌のため御逝去。享年72歳。 ドラマ、映画主題歌では『太陽がくれた季節』(『飛び出せ!青春』)、『聖母(マドンナ)たちのララバイ』(『火曜サスペンス劇場』)、『戦士の休息』(『野性の証明』)等があり、歌謡曲でも多数の作品を残されていますが、特撮関連では何と言っても『宇宙刑事ギャバン』に始まるメタルヒーローシリーズの主題歌、挿入歌の作詞を手掛けられた事でしょう。それまでの特撮ヒーロー主題歌の歌詞は物語の世界観を歌ったものが主流でしたが、『ギャバン』ではヒーローの生きざまを高らかに歌い上げる歌詞で、ヒーローソングの流れを大きく変えたと思います。メッセージ性の強い歌詞でも感情移入し易く、子どもと一緒に観ていて歌に感銘を受けたという親御さんの意見が聞かれるのも頷けます。そうした中でも『バトルフィーバーJ』挿入歌『明日の戦士たち』は、もし「教科書に載せたい特撮ソング」があるとすれば、個人的には『ライオン丸のバラード・ロック』とこの歌を挙げたいです。

  慎んで御冥福をお祈り申し上げます。

  いろいろあるよ、いろいろね

 ・6月に第二章が公開された『宇宙戦艦ヤマト2202』。オリジナルのシリーズ2作目に当たる劇場映画『さらば宇宙戦艦ヤマト』、テレビシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2』のリメイクとなる本作は、両作のストーリーを踏襲しつつ、随所に見られる新設定、新解釈には「なるほどこう来たか!」と感心させられました。特に第二章前半のエピソードで明らかになったある設定(元ネタは『戦国自衛隊1549』?)はこの後のシリーズのリメイクも視野に入れた、オリジナル『ヤマト』シリーズに見られた様々な矛盾を解決出来る設定と言えるでしょう。さて、特撮ファンとして注目したいのはシリーズ構成の福井晴敏氏と共同で、脚本に『ウルトラマンサーガ』、『リュウケンドー』等の監督として知られる岡秀樹(おかひでき)氏が参加している事です。第一章冒頭、地球・ガミラス連合艦隊とガトランティス艦隊との闘いに、アンドロメダが突然拡散波動砲で割って入ってくるくだりは岡氏が助監督として参加した『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ』冒頭のプロメテウス登場の件にそっくりで、『さらば』、『2』から20年目の 『ティガ&ダイナ』でアンドロメダの影響下と思われるプロメテウスが、それからまた20年近くの年を経て今度は本家のリメイク版に影響を与えているとするとニンマリさせられてしまいます。第二章でも第11番惑星で斎藤始らのピンチにヤマトが颯爽と駆けつける展開はオリジナルも含めたシリーズ中でも屈指のカッコ良さと言ってよく、こうしたヒーローものの王道展開は岡氏の執筆によるのではないかと邪推しています。10月に第三章が公開されますが今後の展開が果たしてどういうものになるか、目が離せないところです。

・昨年末に秋田書店より発売された『仮面ライダー冒険王』。秋田書店『冒険王』は当時『仮面ライダー』掲載誌の一つでしたが、『ライダー』関連の大人向けのムック本と言えば講談社が多く、秋田書店からは珍しいように思います。それだけにインタビュー記事は斎藤浩子さんインタビュー等これまでなかった切り口のものが見られました。特に個人的に目を引いたのは太田克己録音技師のインタビュー中で、第1作から『アマゾン』辺りまで音響効果を担当した協立音響について触れていた事です。昭和40年代には『仮面ライダー』と同時期の東映生田スタジオ作品の他、国際放映(東宝テレビ部)はじめ円谷プロ、大映テレビ等各社の音響効果を担当していた協立音響ですが、昭和50年代辺りからは名前を見る機会が余り無くなり沿革については殆ど不明でした。インタビューによると(周知のように)『ライダー』立ち上げ時はストの関係で東映の大泉撮影所やスタッフが使えない状況で、太田氏が新東宝出身だった縁から、やはり新東宝出身のスタッフが起こした協立音響に音響を依頼した、その後創業者の逝去により解散したとの事でした。 『ライダー』でよく使われていた効果音はそれ以前から協立音響担当以外の『怪奇大作戦』や『キャプテンウルトラ』等で使われているものがあり、元々いつどの作品で作られた音源なのか見当がつきませんでした。しかしこうした音源の元が新東宝もしくは新東宝出身のスタッフによるものだとすると、直系の国際放映や同じ砧系の円谷プロ、移籍したスタッフが比較的多かった東映でも同じ効果音が使われていてもおかしくない訳です。新東宝自体は物心つく頃にはすでにありませんでしたが、同社の人材がその後、私らが親しんできたテレビ作品で活躍されていた、新東宝人脈の奥深さの一端を実感させられました。

・6月末、小学館学年誌全盛期のウルトラシリーズや円谷作品の記事を復刻した『学年誌ウルトラ伝説』が発売されました。学年誌の復刻本は'03年に『ウルトラ博物館』が刊行されていますが、今回は幼年誌や第3次ウルトラブームのきっかけの一つとなった『GORO』の記事、学年誌でも父兄に向けた記事等、年代順に幅広く当時の記事を扱っています。その分各々の再録記事が少ないのは残念ですが、本書が売れて続刊が出る事に期待しましょう。今回特に注目はテレビシリーズが製作される以前、'69~'70年度にかけて円谷プロのオリジナルヒーローとして漫画掲載された『ミラーマン』、『ジャンボーグA』等についても触れている事で、映像化されたものとは設定やキャラクターデザインが異なるこれらの作品が商業誌に復刻されるのはおそらく初めてかと思います。また、'70年『小一』連載の『ジャンボーX』を改めて読んでみると、主人公の少年はウルトラセブンに変身能力を授かるというセブン絡みの出自や、ピグモンのヒロイン的ポジションと、ウルトラマンゼロの原点は『ジャンボーX』だったのかと思わされます(変身 して立ち向かう敵がピグモンをさらった盗賊団?なのは驚きましたが)。ウルトラ新作スタート前年に当たる'70年や'78年における人気の盛り上がりぶりを知る上でも貴重な資料と言えるでしょう。録画機器や映像ソフトがなく、映画もテレビ番組も一度観たらなかなか再見する機会がなかった当時、作品を追体験するのに最も身近なメディアがこれらの雑誌でした。現在では昭和40年代以降の特撮作品の殆どはソフトやCSで視聴出来るようになりましたが、逆にこうした雑誌記事を目にする機会は保存していない限りありません。しかしこうした記事を通して当時の空気を追体験した上で作品に触れると、当時を知る人も知らない人も新たな発見や違った見方が出来るのではないかと思います。

・『アイドル戦士 ミラクル☆ちゅーんず』、三池崇史監督はじめ『ケータイ捜査官7』以来のスタッフのようですが、2、3話観たもののどうにも乗れずに観るのを辞めていました。『スケバン刑事』はともかく『プリキュア』や『セーラームーン』等、どうも個人的にこの種のジャンルは立ち入れないものを感じてしまうのです。しかしこの番組、意外に小学生女子の間では人気がある(らしい)との話をネット上で見かけました。小学校に上がり『プリキュア』を観なくなった子がこちらは夢中になって観ているそうで、こういう話を聞くと侮れないと思ってしまいます。可愛くない(失礼)印象だった主役の子たちも、それは私のようなオッサンの目線であって、小学生ぐらいの女の子からすれば憧れのお姉さんなのかも知れませんし、そういう基準で選ばれた子たちなのでしょう。特撮番組、或いは子ども向け実写番組というと男児向け変身ヒーローものが大半となっている現在だけに、違ったジャンルの作品が出てきて本来の対象から支持を得ているとすればそれは喜ばしい事で、健闘を期待したいです。

・6月に4回に渡って放映された『怪獣倶楽部』。関東では最終回の放映が奇しくも竹内博さんの命日でした。『ファンタスティックコレクション』や『ゴジラ』、『ウルトラ』関連のサントラアルバムには、私を含め50代前後の特撮ファンにとっては人生を変えられたと言っても過言ではなく、それまで皆無に等しかったこれら大人向け特撮関連出版物の仕掛人が集っていたグループを題材としたドラマが作られるとなると「一体何が飛び出すのか!」と期待半分、不安半分でした。私としては怪獣倶楽部の活動が実を結び『ファンコレ』等の出版物が世に出ていくまでをドラマ化する事を期待していましたが、その辺りについては最終回ラストのナレーションで語られるに留まり、実録性よりは現実の団体を題材としたフィクションの色合いが強い内容となっていました。『ファンコレ ウルトラセブン』が画面に出てきたり、1話毎のテーマがウルトラシリーズのエピソード1本に絞られていたり(しかも4話中3話が『セブン』)は目を瞑れるにしても、主人公リョウタのファン活動と恋人との交際の両立への葛藤がかなりのウエイ トを占めているのはいささか安っぽい内容になってしまったように思います。オチも見えてましたし、怪獣に興味のない一般視聴者にドラマに入ってもらう為の作りだったとは思いますが。しかしリョウタの苦悩をその回の題材となるエピソードの場面で再現した映像は妙に良く出来ており、思わず笑ってしまうシーンがいくつかありました。ゼットンの光線などは実物そっくりに描き起こしたのではなく、オリジナルの画像から光線素材だけ抽出しているように見えますが、デジタル技術でここまで出来るのでしょうか。住田崇監督は『バカリズムマン対怪人ボーズ』、『ウルトラゾーン』の実績があり、パロディは流石と思いましたが、一体何者でしょう。結果的に期待していたものとは違いましたが、ドラマの題材として取り上げてくれた事は嬉しく思います。

・ 『緯度G大作戦2012秋』にゲストで来ていただいたまついえつこさんが8月放映のテレビ朝日系UX新潟テレビ21『炎の天狐トチオンガーセブン』、『霊魔の街』の音楽を担当されるとの事。『トチオンガー』はかつてのピープロ獣モチーフヒーローを彷彿とさせるキャラクター、『霊魔』(音楽は配島邦明氏と共同)は新潟を舞台にしたホラードラマで、長谷川圭一脚本、八木毅監督と『大決戦!超ウルトラ8兄弟』のコンビ。全国放送ではないのが残念ではありますが、視聴可能な方は応援よろしくお願いします。
 『炎の天狐トチオンガーセブン』  http://www.uxtv.jp/tochio7/
 『霊魔の街』  http://5ch.uxtv.jp/bangumi/reima/

・日曜朝『スーパー戦隊』、『仮面ライダー』枠が10月より報道番組開設の影響で、従来の7:30~8:00、8:00~8:30からそれぞれ9:30~10:00、9:00~9:30に移動との発表がありました。『戦隊』は'97年4月以来約20年ぶり、『ライダー』はメタルヒーロー時代の'89年4月以来約28年ぶりの枠移動となります(新作『仮面ライダービルド』は9月スタート)。大型報道番組新設に伴い長年定着していた番組を枠移動若しくは終了と言えば、かつて『ニュースステーション』スタートで『特捜最前線』、『必殺シリーズ』が影響を受け、今年は『土曜ワイド劇場』が日曜午前に移動と、テレビ朝日では度々ありました。また、『戦隊』、『ライダー』(『メタルヒーロー』)枠ともこの時間に落ち着くまでには何度か枠移動があり、今回は1~2時間遅くなる程度、私は殆ど録画で観ているので単に予約設定を変えるだけ、と、それほど重大に捉えてはいませんでした。しかしリアルタイムで視聴している現役児童とその家族にとっては、この時間帯に朝食 を済ませてから外で遊ぶ習慣が定着しているそうで、そうした習慣が崩れる、また『ワンピース』など他局のアニメと重なる等、戸惑いの声が挙がっているようです。思い返せば『メタルダー』が月曜19時台から日曜朝に移動になり、同時期スタートの『仮面ライダーBLACK』も日曜午前と、19時台から特撮番組が無くなる事になってしまいましたが、この時期より19時台は特撮番組のみならず30分枠自体が無くなり始めており、全体的な番組編成が変わってゆく時期でした。あれから30年(!)経ち、また変わり目の時期に来ているのかも知れません。

・『シルバー仮面』、『レッドバロン』が劇場作品『ブレイブストーム』のタイトルでリメイク、秋公開との情報が入って来ました。脚本、監督は『ウルトラ銀河伝説』をプロデュースしたTYO傘下時代の円谷プロ副社長だった岡部淳也氏。氏のSNSで『レッドバロン』製作中とは聞いていましたが、シルバー仮面と競演という形でリメイクとは思いもよりませんでした。両作とも過去にそれぞれ一度あったリメイク('94年、'06年)と同様にキャラクターを借りた別作品の感もありますが、登場人物には紅、春日兄弟だけでなく静弦太郎らしき人物も出てくるようで、宣弘社、日本現代企画ラインの集大成になるのか。短い間にしろ円谷プロに籍のあった人物が製作陣の中核とは因縁を感じますが、どういう経緯で権利を取得したのかが気になります。


・8月発売が予定されていた円谷恐竜3部作『ボーンフリー』、『アイゼンボーグ』、『コセイドン』サントラが発売中止との告知がありました。発売元のコロムビアが7月末に配信業者フェイス傘下に入り、上場廃止となった事がどうも影響しているらしいです。3作とも単独でのサントラCD化は初めてだけにショックを受けた方は多いのではないでしょうか。コロムビアは近年でも円谷プロや東映の旧作サントラを積極的に出しており、これで今回の3作のみならず他の作品についてもこの先サントラ化の可能性が狭められる事になります。CDが売れていないとは聞いていましたが、こういう事実を突き付けられるとショックです。

・9月スタート『仮面ライダービルド』が製作発表されました。変身のバリエーションが『ジード』同様2つのアイテムの組み合わせですがこちらは生物+機械で、デストロン怪人か?との声が挙がっていますね^_^;(一部キャラクターの名称がダーク破壊部隊かと言われた『キュウレンジャー』といい…)。しかし変身のバリエーションにアイテムを使うのはウルトラよりライダーの方が受け入れ易いように思います。それにしても今回の主人公は天才物理学者との事ですが、本郷猛が科学者という設定は殆ど忘れられているような^_^;。マッチョで男臭いイメージが歳をとる程強調されているせいですが、考えてみればそれで超インテリエリートとは、本郷猛は東映を象徴する人物像だったんだなと思ってしまいます。さて、今回脚本を担当する武藤将吾氏はテレビドラマで活躍されていた方ですが、平成ライダーは観ていなかったのが、ご子息と一緒に観ていてハマってしまいシリーズを一通り観たのだそうで、これまた『ジード』の乙一氏起用と同様のケース。やはり長く続いているシリーズだけに、新鮮な目でシリーズに接した人を起用しているのでしょう。

   おわりに

 先日、渋谷で行われた『佐藤勝音楽祭』をGスタッフ何人かと観賞して参りました。こうしたコンサートには行った事はなかったのですが、4月に行われた『伊福部昭音楽祭』で生演奏の迫力にやられ、今回も参加した次第です。内容は『幸福の黄色いハンカチ』を筆頭に、岡本喜八監督作品、黒澤明監督作品、そして『ゴジラ』シリーズという流れでした。『100発100中』、『南海の大決闘』がなかったのは残念でしたが、どの曲も時には血沸き肉躍り、時には感情を揺さぶられる曲ばかりで、やはり日本を代表する映画音楽家だった事を実感させられました。中でも『ゴジラの息子』エンディングは隠れた名曲です。 最初にイベント盛りだくさんと書きましたが、今年の『ウルフェス』では、以前よりウルトラファンである事を公言していた女優の土屋太鳳ちゃんが公式サポーターに就任。メジャーな女優さんが特撮関連のイベントを応援してくれるとは嬉しいものがあります。有意義な夏を過ごしたいですね。その後は『緯度G大作戦』も年末開催予定です。
それでは又、お会いしましょう。